




だいどころのこえ
「ひらいて、むすんで」
岡崎市美術博物館 2024 Aichi Japan
だいどころのこえ
2024
素材 | 住んでいる家の建具、あらゆる工場の残糸、生活音、声
サイズ | 各 約177cm x 67cm x 6点
取材協力 | 主婦連合会
協力 | アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
ハンドアウトデザイン | 山口麻加
参考資料 | 山縣良子 著『クロス・ステッチの世界 パレスチナ刺繍 増補・改訂版』
展覧会情報 | ひらいて、むすんで 岡崎市美術博物館 2024.4.13-6.16
展示会場で配布していた作品解説はこちら↓
https://drive.google.com/file/d/1m118TrGeOEDM4BY17BYoPraiVs8xb5NT/view?usp=sharing
《だいどころのこえ》は、かつて岡崎市にあった施設 *1「働く婦人会館」を起点にリサーチを行 い、自身の経験を重ね展開した新作です。 岡崎の「働く婦人会館」ではどのような活動が行われていたか調査したが、当時の詳しい資料 が見つからず、キーワード検索していくと *2 奥むめおが立ち上げた *3「働く婦人の家」が浮かび 上がってきました。
奥むめおは政治と生活は直結していることを当時の婦人たちに伝え、戦後『台所と政治』を刊 行し、社会問題を学ぶ機会をつくり生活改善、不買運動などを行い、草の根活動をしていました。 第一次、二次世界大戦をまたいだ奥むめおの実践や「こえ」は、いまでも私自身の生活とつながっ ていることを教えてくれます。彼女の残した言葉の中から、現在を生きる私たちに向けたいくつ かの言葉を選び、私自身が、ないこととされている人、歴史、社会制度の気づきから、生活の 中やまちで叫んできた怒りの「こえ」と組み合わせ、作品によって交差性を試みます。
私の言葉はイスラエルによるパレスチナの植民地化、抑圧について知ってから叫んだ怒りの 「こえ」です。手仕事をする人としてパレスチナ刺繡から農業、手工業も盛んで様々な植物が 根付き豊かな文化があることを学びます。
昨年のパレスチナ抵抗運動が、1948年からはじまっていること、パレスチナとイスラエルだけの 問題ではなく、植民地主義、資本主義に傾く世界で、多くの犠牲の上で私たちの生活にも直結 している事だと知りました。76年前から今も毎日市民が虐殺され、家、学校、病院、街が破壊 される画像や映像をSNSによって知ることができます。遠い国のことだからと無関心にはなれな いのは、何気なく買い物をしていた企業の多くが虐殺に加担していることをしり、*4 BDS運動へとつながります。現代もまだ終わらないアパルトヘイトに私は何ができるのか考え、話し続け、権威や権力へ抵抗するために、だいどころからこえをあげられるという希望をこの作品に込めています。
*1「働く婦人会館」
戦後、労働省婦人少年局婦人労働課の働きかけで全国各地に「働く婦人会館」が作られ、現在はいくつかの市町村の会館をのぞき、その多くが岡崎と同様に閉館。岡崎市伊賀新町に1971 年に開館し、2009 年に同地が体育館となり閉館。
*2 奥むめお
1895 年 -1997 年台所から政治を変えようとした政治家、活動家、主婦連の創設者。初の婦人団体「新婦人協会」を平塚らいちょう、市川房枝らとともに設立した人物。
*3「働く婦人の家」
1930年(昭和5年)に奥むめおが当時の社会運動であるセツルメントを参考に立ち上げた託児所兼集会所「婦人セツルメント」が発展し、全国にも展開した。
*4 BDS運動
BDS運動とはイスラエルに対するボイコット(不買)・資本引揚げ・制裁を求めるキャンペーン。