港のおみやげ

MAT Exhibition vol.9

「名古屋 × ペナン同時開催展:名古屋文化発信局」(名古屋本部)」

Minatomachi POTLUCK BUILDING

2021 Aichi, Japan

 

 


港のおみやげ
2021
糸、接着芯、サウンド、カッティングシート
取材協力
空見スラッジリサイクルセンター
制作協力
豊田元江、 港まち手芸部(石田久江、行田貞子、島崎恵郁子、白井君子、仲林登志子、吉永栞 )


「港で作られていたお土産があったとしたら」を作品のスタート地点として調べていくと生活に欠かせないエネルギーにまつわる工場がいくつかあった。港区のコークス工場が1997年でコークス生産を終了し、1998年から天然ガスの使用をはじめた火力発電所、2020年に完成した汚泥固形燃料施設がなどがある。時代とともに変化していくエネルギー工場は、CO2 削減と、リサイクルを声高々にあげていた。
一方でまちの人から聞く港の風景の記憶は、ぼた山からコークスを拾ってきたこと、バナナ専門の埠頭がありバナナのたたき売りはそこらじゅうでみたこと、スラッジリサイクルセンターが出来たころに婦人会で見学にいったこと、俳句にしたためた港の景色など、生活のなかで繰り広げられる出来事とエネルギーの変かは密接につながっていた。
港区にあるエネルギーにまつわる工場と、このまちに住む人々から風景の記憶をリサーチし、変化していく様子をペナントのようなものに記し作品として仕立てていった。
ペナント:三角の旗。船や、アメリカの大学、スポーツなどで使われている。日本では独自のお土産文化を創り出したと言われているが今ではもう見なくなった。権威主義的な観光と相性がよく、どこへ行ったかの印として重宝されていたので、このモチーフを用いた。

会場ハンドアウトより Text by MAT, Nagoya
宮田明日鹿は今回「名古屋港のお土産」をテーマに、自身が主宰する「港まち手芸部」のメンバーに「お土産」にまつわるインタビューを行い、名古屋港の名物として想起されるものとして固形燃料のコークスや発電所といったエネルギーにまつわるエピソードを聞き取る。そこから現在はあまり観光資源として日の目を見る機会はあまりないエネルギー産業に着目し、最新の汚泥固形燃料化施設の視察などを行った。そうしたリサーチの結果から、名古屋港にまつわる歴史的なものや象徴的な名物、言葉やスケッチなどを絵柄に、かつて日本各地の代表的なお土産の1つであった「ペナント」を、宮田が普段使っているオリジナルの家庭用編み機を使って制作。ペナント周りの装飾を港まち手芸部のメンバーが施した。
また、オリジナルアイテムを販売できるオンラインサービス「SUZURI」を使って、出来上がったペナントの写真を図柄に使った商品を発注できる設えにして「お土産」というもの自体について考える枠組みにしたり、名古屋港にまつわる俳句を音声として会場で流していたり、宮田にとって実験的な試みを行う。

撮影|藤井昌美 
画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]